趣意書

背景
組み込み型機器の設計、特に通信分野、携帯用途、マルチメディア分野では、仕様の複雑さが急激に増大し、大規模なシステムLSIとその上で動作する大規模な組み込みソフト、すなわち、システムオンチップ(SOC)によってシステムの大部分が構成されるようになっています。その一方で、今まで以上の製品開発期間短縮とコスト削減が求められています。このような機器では、激しい競争にさらされるため、顧客満足度を重視しながら効率的に開発する必要もあります。そのためには商品企画から仕様決めを経て設計に至るまで、スムースに統合された開発プロセスが必要です。統合された開発プロセスがあれば、顧客のニーズ、商品企画のねらい、開発技術者の専門的知識を商品仕様にすばやく組み込む作業や、商品の出来栄えを評価検討する作業を、人手や時間をかけずに低コストに高品質に行うことが容易になります。
仕様段階から設計段階までを組み込んだSOCの開発プロセスを実現するには、
- 概念設計(仕様設計)からアーキテクチャ設計を経て詳細設計へ至るまでの設計プロセスと設計情報の連続性と一貫性の確立と
- システム構成部品のIP化もさることながら、仕様のIP化、設計事例のIP化、による設計資産の再利用
が鍵となります。
このためには、まず、システムの仕様記述言語および仕様データの共通化によって、仕様設計と詳細設計で利用される各種ツールのインターオペラビリティを確立することが必要になります。長年にわたり、多くの言語やデータフォーマットが提案されてきました。近年、システムLSI設計にC/C++を利用する活動が特に活発になってきています。しかしながら、殆どのものは仕様設計と詳細設計の両方を効率的にカバーすることが出来ません。特にツールのインターオペラビリティや設計プロセスや設計情報の連続性および一貫性が非常に達成しにくい状況になっています。例をあげると、仕様設計に主に使われている言語にはUMLがあり、詳細設計に主に使われている言語にはC/C++や、VHDLとVerilogがあります。
SpecC言語を利用したシステム設計技術
多くの大学や有力企業、業界団体の支援や共同開発を得て、多年にわたる研究開発の末、仕様設計と詳細設計をSOC開発プロセスに組み込むための言語としてSpecC言語が開発されました。東芝や日立等の支援の元、カリフォルニア大学アーバイン校が開発しました。SpecC言語はC言語を元ににシステムの仕様記述を行うために作られた言語です。概念設計レベルの仕様記述から、アーキテクチャ設計を行ってシステム構成部品を明確にした詳細設計記述までを、同じセマンティックス、同じシンタックスで区別なく記述することができます。インプリメント時にHWとなる部分とSWとなる部分との間も区別がありません。さらに、システムの概念設計から詳細設計にまで仕様を具体化するプロセスと、仕様記述の変換方法を策定しました。
SpecC Technology Open Consortiumの目的
本コンソーシアムの目的は、SpecC技術を活用してシステム仕様設計のための業界標準の言語と仕様データフォーマットを作ることです。また、組み込みソフト開発ツール業界、EDAツール業界、そしてシステム設計企業の協力活動を実現、加速して、仕様設計から詳細設計までを統合したSOC開発プロセスをSpecC言語で実現し、深耕・普及・啓蒙活動を行うことです。
システム設計レベルで各種設計ツールのインターオペラビリティが確立されれば、システム仕様を決める商品企画部門と、仕様を満たす設計をする技術部門との間で、仕様をIPとしてやり取りできるようになります。またシステム全体を設計するシステムハウスと、そこに使われる部品を設計するIPプロバイダとの間で、設計情報をIPとしてやり取りすることもできるようになります。インターネット時代を迎えて、仕様だけを決めて開発は発注するバーチャルコーポレーションと、それを受注して設計製造する設計サービス会社との間での仕様交換を実現することは、次世代の電子工業分野のキーテクノロジーとなるに違いありません。
仕様設計から詳細設計までがスムースにつながった設計手法を導入できれば、システム設計企業の各部門間の情報交換が容易となり、誤解や勘違いなどが減り、無駄な開発時間を削減でき、生産性が大きく高まります。また、市場にSpecC技術にそった多くのツールが供給されるため、特定の商品開発に見合ったツールの組み合わせを容易に実現できるようになり、商品仕様が簡単に検証でき、詳細設計時でもデザインレビューの効率が上がります。
しかしながら、システムはそのアプリケーション分野毎に色々な特徴を持ちます。その結果、システム設計手法のコンセプトはひとつになり得ても、実際には分野毎に専用の設計環境ができるでしょう。システム仕様を会社間でやり取りできる設計環境を実現するには、システム企業、半導体企業、IP・部品企業、ツールベンダーが協力しあう必要があります。
コンソーシアムの形を取り、パブリックドメインで活動を進めるため、メンバーは効率良くSpecC技術へのニーズを提案でき、SpecC言語を使ったSOC設計プロセスの改善を促すことが出来ます。提案や改良はSpecC技術を採用したツールのインターオペラビリティを保ちつつ、ツールベンダーメンバーの手によって各ツールに反映されます。
Consortiumの活動内容案
- SpecC言語の仕様の策定と公開
- ツール間接続のためのデータフォーマットの仕様の策定と公開
- SpecC言語を利用したシステム設計方法論の確立
- 設計環境のガイドラインを策定し、それにそったツールの開発と使用を促進
- SpecC言語を利用したシステム設計方法論の啓蒙のための各種セミナー、出版活動
ステアリンググループを置き、活動内容の決定を行います。SpecC Technologyのユーザを一般メンバーに勧誘します。大学や公的研究機関をアドバイザーメンバーとしてご参画頂けるよう、勧誘します。メンバーは、新しいシステム設計方法論や標準的な言語の早期導入や、ガイドラインやツール、システム設計方法論の開発への意見提案が出来ます。
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